薬の瓦版
薬の瓦版=平成27年6月15日= 第25号

以下、テキスト版です。

大田区薬剤師会        薬の瓦版            2015年(平成27年)6月15日(月曜日)     (ほぼ週刊)
発行:大田区薬剤師会
東京都大田区中央3−1−3
アルカディア中央1階
猛威を振るう中東呼吸器症候群
 韓国保健福祉省は2日、 中東呼吸器症候群(MER S)コロナウイルスに感染 した男女5人が死亡したと 明らかにした。韓国でME RSによる死者が出たのは 初めて。最初の患者から感 染した人物を介し、さらに 広がり、「3次感染」「4 次感染」も確認されている。
 死亡した女性(57)と男 性(71)はいずれも、中東 訪問から帰国し5月20日に 最初に感染が分かった男性 (68)と同じ病院に入院。 同じ病棟で過ごし接触した とみられる。
 日本でも菅義偉官房長官 が感染予防対策を強化する 考えを示すなど、警戒が強 まっている。JTB総研な どによると、今年3月の韓 国から日本への訪問者は26 万8200人。日本から韓 国への渡航者は21万893 2人。1カ月で約40万以上 が行き来している。
 賀来満夫東北大教授(感 染症学)によると、MER Sにワクチンや治療薬はな く、対症療法が中心。「日 本と韓国を行き来する人は 大変多い。この点でエボラ 出血熱よりも危機感を持っ ている」と話す。検疫の強 化も含め「発熱やせきなど が出たら早めに医療機関を 受け、直近の渡航歴もきち んと申告すべき」と注意を 呼び掛けている。MERS はつばやせきによる飛まつ で感染が広がる。

中東呼吸器症候群(MERS)の原因と症状
 中東呼吸器症候群(ME RS)とは、マーズコロナ ウイルスという新型のコロ ナウイルスによって起こる 重症肺炎です。MERSと は、Middle Eas t respirator y syndrome c oronavirus(M ERS-CoV)の略。中東 のヨルダン、カタール、サ ウジアラビア、アラブ首長 国連邦から発生が見られた ことから、中東呼吸器症候 群と命名されました。
 コロナウイルスという と、2002−2003年 にかけて世界中で発生した 重症急性呼吸器症候群(S ARSの原因ウイルスとし て知られています。SAR Sは8,098名の感染者 と、774名の死亡者を出 しました。MERSは20 12年9月から2013年 5月現在までの9ヶ月間 で、50名が感染し、30名が 死亡しています。SARS コロナウイルスの感染経路 は、キクガシラコウモリが 持つコウモリコロナウイル スが遺伝子の変化によっ て、ハクビシンなどを介し、 人に感染したと推定されて います。
 MERSコロナウイルス の感染経路もコウモリコロ ナウイルスに近いと報告さ れており、現時点では、ヒ トからヒトへの感染はあり ますが、大流行するほどで はないと言われています。 ただし、ヒトからヒトへの 感染の可能性があることか ら、大流行に対して注視し ておく必要があります。厚 生労働省によると、基礎疾 患のある人や高齢者で重症 化しやすく、接触者間での 人から人への感染があると し、MERSを入院などの 強制措置が取れる2類感染 症に指定している。
 MERSの症状は、SA RSの症状と非常に似てい ます。発熱、咳、呼吸困難 といった、重症肺炎の症状 です。さらに腎臓の働きが 悪くなる腎不全を合併する ことがあります。重症の肺 炎のため、呼吸ができなく なります。つまり、肺で酸 素を取り込むができなくな ってしまうのです。
中東呼吸器症候群(MERS)の治療と予防
 現時点では、コロナウイ ルスに対する特効薬はあり ません。そのために、重症 の呼吸器症状について、酸 素投与、人工呼吸器での治 療が行われます。人工呼吸 器でも体の酸素を上げるこ とができない時には、膜型 人工肺といって、いったん 血液を体に出して、酸素化 して体内に戻す治療が行わ れます。
 肺炎に対する抗炎症薬、 下痢による脱水に対する補 水、急性呼吸窮迫症候群 (ARDS)に対する人工呼 吸、敗血症性ショックに対 する輸液及び昇圧剤などが 中心となる。また、二次感 染の防止のために、抗生物 質の投与が行われている。 なお、日本に備蓄されてい る抗RNAウイルス薬のフ ァビピラビル (商品名ア ビガン)は、ウイルス性肺炎 の主要原因の一部であるイ ンフルエンザウイルスやR Sウイルスには対しては効 果があるものの、MERS コロナウイルスに対しては 情報が無いため効果は不明 である。
 予防は、石鹸による手洗 い、マスクの装着、ドアノ ブやスイッチやハンドルな どの人の触る所の消毒など がある。洗っていない手で、 目や鼻や口などの粘膜に触 らないようにする必要があ る。また、ウイルスの付着 しやすいマスクの表面には 触らないよう注意する必要 がある。また、病人との接 触は控えた方が良い。ME RSでは無いが、シンガポ ールでのSARSの例で は、病院における医療従事 者・家族・見舞い客への感 染が多かった。
 公共交通機関においても 密接接触(2m以内での接 触)が危険となる。さらに、 病人の排泄物からの感染に 気をつける必要がある。
 また、歯磨きによって口 の中の細菌を減らすこと は、症状の類似する細菌性 肺炎やウイルス細菌混合性 肺炎の予防となる。



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